郷土かるたで学ぶ「おいらせ愛」
取材地:おいらせ町立甲洋小学校
取材日:2017年12月20日
取材者:総務課 髙村 玲
広い太平洋に面し、雄大な奥入瀬川が流れるおいらせ町には、「おいらせ景観百選」と呼ばれるたくさんの自慢があるのだという。
甲洋小学校では、その景観百選を題材にして、卒業生たちが作成した伝統の「おいらせ郷土かるた」を使い、毎年この時期に全校かるた大会を行っている。
郷土かるたの歴史は長く、初代のかるたは町村合併前、旧百石町時代に作られたものだ。当時のかるたは、「おいらせ景観百選」ではなく、旧百石町の文化や風景、伝統芸能、特産品、人物、観光などのあらゆるものから選定された「百石百選」 を題材にしており、当時の六年生たちが卒業記念として一枚一枚を版画で作ったという力作だ。
その後、旧百石町と旧下田町の合併後、学校創立50周年を機に、平成25年度と平成26年度の六年生が二年間かけて作成したものが、現在使われている二代目のかるたなのだという。
おいらせ町と言えば、奥入瀬川と鮭祭りのイメージが思い浮かぶが、この地域にはかるたになるような百もの自慢や魅力があることに驚きながら、かるた大会の取材に向かった。
出迎えてくれた伊藤教頭先生のお話を聞きながら、まずは初代の古いかるたを拝見させてもらう。一枚ずつ机に並べていくと、年期を重ね、とても味がある。
中には、その当時は町長としては日本一若かった三村申吾町長を詠んだ一枚もあるというからおもしろい。版画で、若き日の三村知事が微笑んでいた。
「日本一 若いぞすごい 町長だ」
さて、かるた大会開始の時間になり全校児童が集まる体育館に向かった。玄関の廊下の天井には、拡大版の郷土かるたが張り出されていた。
高学年の児童たちによる競技説明が終わり、いよいよ箱から出されてずらりと並べられたかるたを拝見。
ずらりと並べられた中から、これぞおいらせ町という場面が詠まれた何枚かをご紹介させていただく。
「阿光坊 刀や古墳が たくさんだ」
「えんぶりが 春をつげに やってくる」
「へちょこじる 町のおいしさ 全部こめ」
「時忘れ 桜を楽しむ 下田公園」
「わが町の 自由の女神 そびえたつ」
「列つくり みんなで踊る おいらせ音頭」
どれも、おいらせ町にしかない名所、旧跡、郷土料理など内容は多岐にわたっていた。児童たちが、自分たちの郷土に理解を深めるためにも、ぴったりの内容だ。
さて、いよいよ競技開始!
まずは、自分たちの輪の中にかるたを並べていく。どの札が詠まれるかな?何枚取れるかな?期待と不安でわくわく、落ち着かない低学年の児童たち。
ここからは、札取り合戦!低学年も高学年も、見事な早業で札を取っていきます。
事前にかるたを勉強してきているとのことで、みんなの手が、伸びる伸びる!!
始めのうちは枚数が多く、札を探す時間が長くかかり遠慮がちな対戦だったが、枚数が少なくなってくる後半戦ではみんなの目の色が違っていた。
今か今かと、お目当ての札が読み上げられるのを待ちかまえる。
かるた目がけて、ジャンプ一発!!
高学年の、壮絶な札取り合戦!みんな真剣に一枚のかるたを目指す。
まさに、「その一枚を、掴み取れ!」のハングリー精神が伝わってきた。
最後は、学年を変えて高学年同士、中学年同士での対戦が行われた。学年を超えた対戦では、年上のお兄さん、お姉さんたちが遺憾なく力を発揮していた。
取ったかるたを眺めながら、達成感を味わう児童たち。六年生は最後のかるた大会を振り返りながら少し寂しそうな様子。低学年の児童は、来年はもっと頑張ってたくさん取るぞと気持ちを新たにしていた。
ハイッという大きなかけ声、そして競技ルールを守る心、敗れた友達を思いやる心、故郷を愛し守り伝えていく心、色々な要素が詰まったこの郷土かるた大会の伝統が、これからもずっと続いていってほしい。