息をのむ事故の衝撃 目の前で体験
取材地:青森市立荒川中学校
取材日:2024年4月11日
取材者:千葉 奈津美
JA共済連青森と青森県警察本部が主催する交通安全教室は毎年県内4カ所で行われるそうで、このたび荒川中学校に取材をお願いしました。
荒川中学校では自転車通学が認められていることもあり、主に自転車で想定される事故を中心に8つの事故を再現し、交通安全の意識と取るべき行動を学びます。
講師はスタント会社「スーパードライバーズ」のスタントマン6名で、交通安全教室は、北は北海道から南は沖縄の離島まで対応しているそうです。
中津教頭から
「去年事故につながりそうな危機一髪な場面があった。事故に遭わないよう一人一人が自分事として考えるようにしてほしい」
JA共済連青森の田中理事長から
「令和5年の県内の自転車事故は死亡4人、ケガ305人で63.5%が交通ルール違反によるもの。うち高校生以下の死傷者は全体の34.6%に当たる106人でした。今日の教室をもとに事故のない安全な学校生活を送ってほしい」
と、それぞれあいさつの中で述べられました。
しっかり受け止め、今日の教室の学びを今後の学校生活に活かしてほしいです。
ここから進行は「スーパードライバーズ」に交代です。
交差点の壁にある「スケアード・ストレート」の内容は以下のとおり。
『学習者の目の前で交通事故を再現することにより「恐れ」や「ひやっと・ハッと」する場面を体験してもらい、交通安全意識の醸成と高揚を図るのが「スケアード・ストレートによる交通安全教室」です。
恐怖を実感することで危険運転を未然に防止し、交通ルールの大切さを学ぶことを目的としています。事故を目の当たりにすることで印象に残りやすくなり、学習効果の継続も期待できます。(「スーパードライバーズ」ホームページより引用)』。
この日再現された事故をいくつか紹介します。
下は「違反走行自転車事故」の再現。
交差点で待機した2名が間近で目撃者役となり、生徒たちが6つの違反を指摘します。
みなさんは6つの違反、分かるでしょうか?(現場でなければわからないものがほとんどですが予想してみてください)
<答え>
① 両手離し運転
② ながらスマホ
③ ヘッドホン着用
④ 並走
⑤ 蛇行運転
⑥ 右側逆送 答えてくれた生徒には拍手が送られ、オリジナルステッカーやポケットティッシュがプレゼントされます。
こちらは飛び出した自転車がオートバイと衝突。自転車運転者はあごひもをしていないためヘルメットが飛びました。命を守るために正しい着用を呼びかけました。 大型車の内輪差の巻き込み事故の再現です。
生徒代表2名が近距離で巻きこまれる状況を目撃します。
交差点ギリギリに立てたコーンが巻き込まれ、つぶれました。もし立っていたならば……という恐怖。さっきまで少しは余裕のあった生徒から笑みが消えました。 「交差点ではぎりぎりに立たず、進行方向からは3歩、横からは1歩はスペースを取るように」と具体的な距離感を教えてもらいます。
この事故実は左側から横断中の歩行者との衝突事故です。 自転車が横断してきましたが、自動車からはピラーが死角になり見えていませんでした。
片手でガッツポーズを作り顔の前に持ってきてピラーの死角を再現。「ほんとに見えない」と声が上がっていました。横断歩道上でも車からの見え方を意識して事故を避ける意識が必要ですね。
と思っていたら。おーっと!左から歩きスマホの歩行者が横断だ!そして衝突!!
不意打ちの事故に驚きました。
車が横断歩道なら当然停まるものと思わず、ドライバーと笑顔で目線を合わせる「スマイルコンタクト」で事故に遭わないよう、自分の意識も必要です。 また「その時は何ともなくても立ち去って後で具合が悪くなることもあります。必ず警察に連絡するようにしましょう」と、自分が被害者になったときの対応も教えられました。
以上で本日の再現は終了。スーパードライバーズのみなさんありがとうございました。
そして青森警察署からの安全講話を一部紹介。
自動車と歩行者の事故で被害者は3才の子ども。車の下に入り込んだ子どもに気づかず70メートル引きずられ、子どもの顔は3分の1無くなっていたそうです。
「加害者にも被害者にもなってほしくない」子どもたちはもとよりすべての人に向けた切なる願いです。
最後に生徒を代表し工藤愛永さんが謝辞を述べた。
「様々な事故が起きる状況を学んだので似たような行動をしないよう、安全な行動を心がけるようにします」
この他に3人から感想をもらった。
「目前で体験して怖かった。教えられたとおり交差点では前方3歩、横は1歩の距離を保つようにしたい」(大型車の内輪差巻き込みを近くで見ていた生徒)
「登校中に事故につながりそうな場面を見たことがあるので気を付けたい」(自転車登校の生徒)
「自分とドライバーとの『スマイルコンタクト』や標識を確認して一時停止すれば事故は防げることを学んだ」(徒歩通学の生徒) この日学んだことを忘れずに、被害者にも加害者にもならず、楽しい学校生活を送ってほしいと、家族も友人も誰もが切に願っていると思います。